元・かぼちゃの馬車、中古市場にいくつか売り出されています。
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女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営していたスマートデイズが5月15日に東京地裁より破産開始決定を受けたことは皆さんご存知かと思います。
賃料相場が4~5万円のシェアハウス一室を、シェアハウスへ入居する女性へ仕事を紹介することによる人材斡旋料も入るというセールストークで保証賃料7万円前後というスキームを作り、実態は新規物件の売却利益からオーナーへのサブリース賃料を補填していたスマートデイズ、
金融機関としてのモラルやコンプライアンスなど、目先の利益のために溶けて消えてしまったスルガ銀行、
言いたいことは山ほどありますが、ここでは敢えて控えるとして…
現場で働く人間として、現場で見てきたことをお伝えします。
そもそも、投資用で建設・販売されているワンルームアパートの建築費が一般の一戸建てと比べて割高になるのは、
各戸のワンルーム居室にユニットバス・キッチン等の水回りがそれぞれ設置されるからです。
一般的な一戸建ての場合、坪単価いくら…と建築費を表すことが多く、
坪単価の安さを売りにしているハウスメーカーや、ミニ戸建ての開発を多く行う「パワービルダー」などど呼ばれるところで坪単価@30万円くらいから、
工務店や一般的な建売住宅で坪単価@60万円前後、一流どころのハウスメーカー(住〇林〇あたり)だと坪単価@100万円超え…
といったところです。
これが投資用アパートの場合、「一坪当たりの建築単価」という考え方ではなく、
「1戸当たりいくらで建築できるか」という計算の仕方になります。
一般の木造ワンルームアパートの場合、建物の仕様やロフトの有り無しにもよりますが、
概ね500万円~600万円くらいが1戸当たりの建築費になります。
これに土地代を加えて、
横浜・川崎エリアだと1戸当たり900~1,200万円くらい、
都内の東・北側辺りで1戸当たり1,100~1,400万円というところが現在市況で売り出されている新築アパートの相場でしょうか…
この辺りのことを踏まえて、冒頭に販売図面を載せている元・かぼちゃを見てみると…
明らかに高すぎます!!!
14世帯もあるのに、トイレは1階、2階に各1箇所だけ、
ユニットバスは設置しておらず、シャワールームが3箇所だけ、「キッチンも1階に1箇所のみ、洗面台も2階に3箇所あるだけ、
どんだけ設備ケチってんだ!!!
建物の外観、仕様も冒頭の図面の写真を見てお分かりのように
素晴らしく安普請です!!!
図面の建物は延べ床面積が147.65平米ですので、このエリアでの適正なワンルームアパートをプランニングするとしたら、せめて20平米弱は欲しいところ、そうするとワンルーム8戸くらいのプランになります。
割安でアパートを建築したとしても、建築費は@500万円×8戸=4,000万円くらいにはなるはず。
これが、おそらくこの元・かぼちゃは、私の見るところ2,000万円前後くらいの建築費で十分建つと思います。
どれだけ利益抜いてんだ!!!って話です。
しかも、この図面の物件のエリアで駅から12分も離れて、そもそもシェアハウス需要なんてあるの?
(実際、現地を確認しても半分も入居していませんでした。)
駅徒歩10分以内で20平米弱のワンルームアパートが6万円台で十分借りれるエリアです。
そのエリアで駅から12分の場所に(周りは閑静な住宅地でした。)、
居室部分が4.3帖(7平米弱)の広さしかない、まともな水回りも無いシェアハウスで、
想定賃料は53,000円、借り手がいるはずがありません。
(図面に記載ある想定年間賃料収入8,904,000円÷12ヶ月÷14戸=53,000円)
しかも、一般のアパートは登記上「共同住宅」となり、多くの金融機関で投資用ローンの融資対象となりますが、
シェアハウスは登記上「寄宿舎」となり、ほとんどの金融機関で融資対象と見てもらえません。
融資が組めない、そもそも賃貸運営をしていく前提条件が全く成り立たない物件、
完全に出口がありません。
ちなみに、現地の隣地ブロック塀との隙間に、こんな看板が放置してありました。
スマートデイズ(当時はスマートライフという社名でした。)という会社は破産して終わり、
創業メンバーは問題が大きくなる前に「一身上の都合」で退職しています。
騙された方が悪いのか…
騙した方は宅建免許を取得して事業を行っていたプロなのですから、彼らの責任をもっと追及できないのか…
憤りを感じる問題です。