居住用マンション市場で見られる変化


国土交通省が公表している分譲マンションストック数のグラフ

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昨今の不動産に関するニュースで
“2016年に首都圏の新築マンション供給戸数と中古マンション取引件数が逆転した”
という記事が話題になりました。

2016年に首都圏において供給された新築マンションは3万5,772戸、
それに対し、不動産業者間の物件情報登録システムであるレインズに登録された中古マンションの成約件数は3万7,108戸、
初めて中古マンション成約件数が新築供給戸数を上回りました。

冒頭のグラフにもあるように、新築マンションの供給戸数はリーマンショックで多くの中小デベロッパーが破綻、経営危機に陥った影響で供給数が減少し、そこから多少の回復は見られたものの、近年では供給数の調整が続いています。

用地仕入れ価格の高騰、建築費の上昇、供給されるマンションの大型物件化等の要因もあり、マンション分譲事業を手掛けられる事業主が資金力のある財閥系、電鉄系デベロッパーに絞られてきているため新築マンションの供給数が伸びず、単純に新築が減ったから中古成約件数が逆転したのか…というと決してそれだけでありません。

その原因の最大のものは
“良質な中古マンションストックが充実し、新築マンションとの商品力の差が極めて小さくなった”
というところにあるのでは…と私は感じています。

中古マンションとして流通している物件の築年数で最も多いボリュームゾーンは築15~20年くらいのもの、
現時点で築20年は平成9年築、築15年は平成14年築となりますが、ちょうど平成9年くらいから分譲されたマンションの仕様は、今の新築マンションの仕様とそれほど大きくは変わらないものになっていました。
全居室がフローリングになり、リビングに床暖房が付き、浴室には乾燥機が付いている、このような仕様が一般化してきたのがちょうど20年前くらいからです。
(私が新築マンションデベロパーに新卒入社したのが平成9年4月です。)

そこからリーマンショックまでの10年間は、全国で新築マンションが20万戸前後供給される「大供給時代」が続きました。
現在供給されている中古マンションのストックが大量に蓄積されてきていた訳です。

リーマンショックで一旦マンション市況は停止状態となりますが、マンション市況が回復し始めた平成24年くらいから、今度は都心の一等地や湾岸エリア等でハイグレードなタワーマンションの供給も増加してきます。
平成24年~26年くらいに供給されたマンションは、用地をかなり割安な値段で仕入れられている物件が多く、建築費もまだ高騰する前ですので、価格の割に高級仕様の物件が多く見られました。
このころ供給されたマンションも最近多く中古マンション市場で売り出されるようになりました。

良質な中古マンションのストックが数多くあり、いくらでも選べる状態にある。
それに比較して現時点で供給されている新築マンションは数も限られ、また用地価格や建築費の高騰から建物のグレードを明らかに落としている物件が多く、新築マンションが中古マンションに比べて「陳腐化」している状況すら見受けられます。

具体的には、コンクリート躯体立ち上げだったバルコニー手摺部分や廊下部分がガラスパネル等になっていたり、外階段が鉄骨階段になっていたり…
華の新築分譲マンションを買ったつもりが、建物が完成してみると
“なにこれ…賃貸マンション!?” となる物件も少くありません。

2016年に新築マンション供給戸数と中古マンション成約件数が逆転した、というニュースは、ただ数の問題だけだはなく、日本のマンション市場がフロービジネスからストックビジネスにシフトしたことの現れである、と私は感じています。

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