敷地を分割譲渡する場合の注意点


お客様に提供した査定書と測量図等の調査資料

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先日、資産家のお客様がご所有されている築古鉄筋コンクリートマンションの売却査定をご依頼いただき、土地・建物の謄本、公図、測量図等の資料とにらめっこしていたところ…

“なんかおかしいぞ…” となってきました。

20年以上、不動産売買に携わり、多くの資産査定をこなしてくると、怪しい要素に対してのアンテナも敏感になります。

その建物は今から約40年前に建てられたマンションで、対象不動産の存するエリアは建ぺい率50%、容積率100%の第一種低層住居専用地域に当時から指定されており、現在でも用途地域は変わっていません。

用途地域の中でも “低層住宅等の良好な住環境を守るための地域” として、建物の高さ制限、日影規制、用途制限等の厳しい規制がかかる地域になります。

私が “おやっ” と思ったのは、マンションが建てられている敷地が、何年か前に何筆かに分筆(一筆の土地を数筆に分割すること)されていたこと。

元々は800平方メートル超あった敷地で、当該マンションはその敷地面積に建てられる目いっぱいの容積率を使用して約40年前に建てられていました。
容積率目一杯使用している、とは言っても容積率100%、建ぺい率50%の地域で3階建てのマンションを建築すれば、敷地の70割弱は建物の建っていない未利用地のような状態になります。

その利用していなかった敷地の一部を分筆し、現況のマンションの敷地は500平方メートル強になっていました。

ご自身所有の土地ですから、分筆をして売却されること自体は何ら問題ないのですが…
(おそらく相続等が発生され、資金化のために売却されたのだと思います。)

問題なのはその敷地に残ったマンションです。

築40年経過した現在でもしっかりとメンテナンスされ、ほぼ満室状態で運営できている非常に優良な資産なのですが、現段階でこのマンションを第3者に売却しようとした時に大きな問題が発生します。

それは、このマンションの建築面積に対して敷地面積が分筆により減少しているため、現況では容積率オーバーの建物になってしまっている、ということ。

単純計算ですが、現況の土地面積に対して130%超の床面積の建物が建っており、地域容積率100%から30%超オーバーということになります。
一般的に、このような建物は「既存不適格建物」と呼ばれます。

既存不適格建物となると、金融機関の担保評価が出なくなるため、基本的に融資が利用できない物件となります。

建築当初から用途地域の変更があった、道路用地として敷地の一部が収用された…等の場合であれば、ある程度金融機関も融通を利かせてくれる場合もありますが、それでもせいぜい10%オーバーくらいです。

さすがに自己都合で売却されて30%超オーバーとなると、殆どの金融機関は融資不可でしょう。
(融資利用可能な金融機関も1行ほど心当たりはありますが、融資条件は厳しくなります。)

はたして、今回売却査定をいただいたお客様は、数年前にマンション敷地の一部を売却された際に、残ったマンションが既存不適格建物になる、という説明を受けられて売却されていたのだろうか。

売却すること自体は何ら問題ない取引ではあるが、その取引の間に入ったであろう仲介会社は、おそらく何の説明もないまま取引を進めたのではないでしょうか。
そうでなければ、今回のような売却査定依頼にそもそもつながっていないはずです。

当時の詳しい状況は分かりませんし、私も資料を基に推測しているだけですので、あまり断定的なことは言えませんし、何度も言いますが分筆をして土地を売却するという取引自体は何ら問題のあるものでもありません。

ただ、その取引を行う上で、残ったマンションの資産価値を大きく減額させてしまうことになる、ということを説明していたかどうか、仲介者として重要な部分はこの点だと思います。

今後、“建物が建築されている土地の一部を売却したい” とお考えの方は、残った建物が既存不適格建物にならないかどうか、その点はしっかり確認されることをお忘れなく!

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